FLコストとは飲食店の食材費(Food)と人件費(Labor)の合計で、FL比率は「(食材費+人件費)÷売上×100」で計算し、業界では60%以内が目安とされることが多い指標です。家賃(Rent)を加えたFLRコストは、70%以内が目安と言われます。
この記事は、飲食店のオーナーや店長、開業準備中の方で、利益が残りにくい原因を数字でつかみたい方に向けて書いています。最低賃金の引き上げや社会保険の適用拡大で人件費が増えているお店にも参考になる内容です。
FLコストの定義と計算方法、人件費に含める費用、計算例、公的調査から見た小規模店の実態、人件費が上がる要因、FL比率の下げ方と下げすぎのリスクまでを順に解説します。
FLコストとは?FL比率の計算方法
FLコストは、飲食店の経費の中で特に大きい「食材費」と「人件費」をまとめて管理するための考え方です。2つを合わせて見ることで、たとえば「人件費を削った分、仕込みを外注して食材費が増えた」といった入れ替わりも把握できます。
FLコスト=食材費(F)+人件費(L)
FL比率(%)=(食材費+人件費)÷売上×100
食材費は、仕入れ額ではなく在庫の増減を調整した実際の原価(期首在庫+当月仕入−期末在庫)で計算します。売上と費用はどちらも税抜きでそろえるのが基本です。
FLRコストとは
FLRコストは、FLコストに家賃(Rent)を加えたものです。家賃は売上に関係なく毎月かかる固定費のため、立地や物件の負担が重すぎないかを確認するのに役立ちます。
FLR比率(%)=(食材費+人件費+家賃)÷売上×100
家賃に共益費や駐車場代を含めるかどうかは、店ごとにルールを決めて毎月同じ基準で計算しましょう。
FL比率の目安は?60%以内とされる理由と実態
FL比率は60%以内、FLR比率は70%以内が、飲食業界で目安とされることが多い数字です。ただし、法律や公的機関が定めた基準ではなく、業態や営業形態によって適正値は変わります。
60%という目安は、残りの40%から家賃、水道光熱費、広告費、減価償却費などを払い、さらに利益を残すために必要な水準として使われています。食材費と人件費をそれぞれ30%前後に抑えるイメージです。
公的調査から見た小規模飲食店の数字
日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」は、従業者50人未満の小企業の決算データから、業種別の売上高総利益率と人件費対売上高比率を公表しています。ここから「(100%−売上高総利益率)+人件費比率」で、FL比率に近い数字を計算できます。
| 業種 | 原価率(100%−総利益率) | 人件費比率 | 合計(FL比率の参考値) |
|---|---|---|---|
| 一般飲食店(平均値) | 35.0% | 32.9% | 67.9% |
| 一般飲食店(黒字かつ自己資本プラス企業平均) | 32.2% | 31.5% | 63.7% |
| 食堂,レストラン(平均値) | 35.2% | 33.0% | 68.2% |
| そば・うどん店(平均値) | 30.6% | 38.2% | 68.8% |
| 喫茶店(平均値) | 28.1% | 29.8% | 57.9% |
| 酒場,ビヤホール(平均値) | 32.2% | 32.2% | 64.4% |
出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」業種別経営指標(飲食店,宿泊業)をもとに編集部が計算。
同調査の人件費には役員報酬などが含まれるため、経営者自身の報酬も入った数字です。小規模店では店主の報酬が人件費に入る分、FL比率が60%を超えやすいことがわかります。自店の数字を比べるときは、店主の報酬を含めるかどうかをそろえて確認しましょう。
人件費には何を含める?
FLコストの人件費(L)は、給与だけでなく、従業員を雇うためにかかる費用全体で考えます。含める範囲が月によって変わると比較ができないため、最初に範囲を決めておくことが大切です。
| 費用 | 内容 | 人件費に含めるか |
|---|---|---|
| 給与・時給 | 正社員の給与、アルバイト・パートの時給、残業代・深夜手当 | 含める |
| 賞与 | 年2回などの賞与。月ごとに按分して計上すると比較しやすい | 含める |
| 法定福利費 | 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険などの事業主負担分 | 含める |
| 福利厚生費 | まかない、制服、健康診断、通勤手当など | 含めるのが一般的 |
| 役員報酬・店主の報酬 | 法人の役員報酬。個人事業主は事業主の取り分を目安として加える方法もある | 店のルールで統一 |
| 派遣・業務委託費 | 派遣スタッフや清掃・仕込みの外部委託費 | 実質的な労働力なら含めて管理 |
まかないは、食材費に入れるか人件費(福利厚生費)に入れるかで扱いが分かれます。どちらに入れても、毎月同じルールで処理することが重要です。
FL比率の計算例
ここでは、月商800万円の飲食店を仮定してFL比率とFLR比率を計算します。数字はすべて説明用の例です。
| 項目 | 金額(例) | 売上比 |
|---|---|---|
| 売上(税抜) | 800万円 | 100.0% |
| 食材費(実際原価) | 256万円 | 32.0% |
| 人件費(給与200万円+賞与按分10万円+法定福利費25万円+福利厚生費5万円) | 240万円 | 30.0% |
| FLコスト | 496万円 | 62.0% |
| 家賃 | 64万円 | 8.0% |
| FLRコスト | 560万円 | 70.0% |
例:FL比率は496万円÷800万円×100=62.0%で、60%の目安を2ポイント上回っています。FLR比率は560万円÷800万円×100=70.0%です。
FL比率を60%にするには、FLコストを800万円×60%=480万円に抑える必要があります。たとえばシフトの見直しで人件費を16万円減らし224万円にすると、(256万円+224万円)÷800万円×100=60.0%になります。
人件費が上がる要因は?最低賃金と社会保険の適用拡大
2026年は、人件費を押し上げる制度変更が続いています。FL比率を管理するうえで、次の2点は必ず確認しておきましょう。
2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円
厚生労働省によると、令和8年度(2026年度)の地域別最低賃金の全国加重平均額は1,177円で、前年度の1,121円から56円の引き上げです。改定額は2026年10月1日から12月2日までの間に、都道府県ごとに順次発効される予定です。
例:最低賃金で働くアルバイトの総労働時間が月1,500時間の店で時給が56円上がると、給与だけで1,500時間×56円=84,000円の増加です。実際の影響は店の所在地の最低賃金額と、現在の時給水準によって変わります。
社会保険の賃金要件が2026年10月1日に撤廃
日本年金機構によると、短時間労働者が社会保険に加入する要件のうち、所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金要件が2026年10月1日に撤廃されました。週の所定労働時間20時間以上、従業員数51人以上の企業、学生でないことなどの要件は残っています。
厚生労働省の特設サイトでは、企業規模要件も段階的に縮小され、2027年10月から従業員数36人以上、最終的には2035年10月から10人以下の企業も対象になる予定と案内されています。加入者が増えると、事業主負担の法定福利費が人件費に上乗せされます。
FL比率の下げ方は?
FL比率を下げるには、食材費と人件費のどちらか一方だけでなく、両方を合わせて見直すことが大切です。売上を伸ばしてFL比率を下げる方法もあります。
シフトの最適化
時間帯別の売上や来客数と、配置人数を並べて確認します。売上の少ない時間に人が多すぎないか、ピーク時に人手が足りず売上を逃していないかを見ることで、人件費をムダなく配分できます。
セルフオーダーなどの省力化投資
モバイルオーダーやセルフレジ、券売機、食器洗浄機などを導入すると、注文受付や会計、洗い場の作業時間を減らせます。導入費用がかかるため、国の省力化投資向けの補助金なども確認し、何時間分の作業が減るかを試算してから判断しましょう。
メニューの絞り込み
メニュー数が多いと、仕込みの手間と食材の種類が増え、人件費と食材ロスの両方が膨らみます。出数の少ないメニューを整理し、食材を共通化すると、仕込み時間と廃棄を同時に減らせます。
食材ロスの削減
発注量の見直し、先入れ先出し、ポーション管理の徹底で、食材費のムダを減らします。理論原価率と実際原価率の差が大きい場合は、ロスが多いサインです。
下げすぎのリスクにも注意
FL比率を下げることだけを目標にすると、料理の量や品質が落ちたり、スタッフ1人あたりの負担が増えたりします。その結果、お客様の満足度が下がって客数が減ったり、離職が増えて採用・教育のコストがかさんだりするおそれがあります。
FL比率は、売上や客数、口コミ、スタッフの定着率とあわせて見ることが大切です。数字が目安に収まっていても、サービスの質が保てているかを定期的に確認しましょう。
FLコスト管理のチェックリスト
- □ 人件費に含める範囲(賞与・法定福利費・まかない・店主の報酬)を決めている
- □ 食材費は棚卸しをもとにした実際原価で計算している
- □ FL比率とFLR比率を毎月同じ方法で計算している
- □ 店の所在地の2026年度最低賃金額と発効日を確認した
- □ 社会保険の加入対象となる従業員を確認した
- □ 時間帯別の売上と人員配置を比べてシフトを組んでいる
- □ 出数の少ないメニューと食材ロスを定期的に見直している
- □ 品質や接客、スタッフの負担が下がっていないかも確認している
よくある質問
Q. FL比率が60%を超えたら必ず赤字ですか?
A. 必ず赤字になるわけではありません。家賃が安い、広告費がほとんどかからないなど、ほかの経費が低い店ではFL比率が60%を超えても利益が出る場合があります。FLR比率や営業利益とあわせて判断しましょう。
Q. 個人経営で店主しか働いていない場合、人件費はどう考えますか?
A. 個人事業主の自分への報酬は経費になりませんが、店主の労働も店を回すためのコストです。自分の生活に必要な金額を人件費として仮に加えて計算すると、実態に近いFL比率がわかります。
Q. 人件費率の目安はどのくらいですか?
A. 一律の基準はありませんが、FL比率60%の内訳として食材費・人件費をそれぞれ30%前後とする考え方がよく使われます。日本政策金融公庫の調査では、一般飲食店の人件費対売上高比率の平均値は32.9%でした(役員報酬を含む)。
Q. FL比率はどのくらいの頻度で確認すればよいですか?
A. 月次の棚卸しと給与計算に合わせて、月1回は確認するのが基本です。人件費は日々のシフトで変わるため、日別・週別に売上と労働時間の比率を見ると、早めに調整できます。
まとめ
FLコストは食材費と人件費の合計で、FL比率は「(食材費+人件費)÷売上×100」で計算します。業界では60%以内、家賃を加えたFLR比率は70%以内が目安とされることが多いものの、公的調査を見ると店主の報酬を含む小規模店では60%を超えるケースも珍しくありません。
2026年度は最低賃金が全国加重平均1,177円に上がり、10月1日には社会保険の賃金要件も撤廃されました。シフトの最適化、省力化投資、メニューの絞り込み、ロス削減を組み合わせ、品質や働きやすさを損なわない範囲でFL比率を管理しましょう。
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