2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円に決まりました。前年度の1,121円から56円の引上げで、全47都道府県で54〜65円上がります。発効日は都道府県ごとに異なり、2026年10月1日から12月2日にかけて順次切り替わります。
パート・アルバイト比率の高い小売・外食では、最低賃金の改定がそのまま人件費に響きます。複数の県に店舗がある場合は、県ごとの発効日の管理も必要です。この記事では、47都道府県の一覧、違反しないための計算方法、使える助成金、シフトへの影響を整理します。
2026年度 最低賃金改定のポイント
- 全国加重平均:1,177円(前年度比+56円、約5.0%)
- 最高:東京1,280円、神奈川1,279円、大阪1,231円
- 最低:宮崎1,085円、高知・沖縄1,086円
- 最高額に対する最低額の比率:84.8%(前年度83.4%、12年連続で改善)
- 発効日:10月が37都道府県、11月が7府県、12月が3県
中央最低賃金審議会は2026年7月28日、引上げ額の目安をAランク54円、Bランク・Cランク56円と答申しました。実際には33府県が目安を上回り、全国平均は目安(1,176円)を1円上回りました。
政府の「2020年代に全国平均1,500円」という目標は、2026年の骨太の方針で「遅くとも2030年代前半のできる限り早期」に修正されています。今後も毎年の引上げは続く前提で、人件費計画を立てておく必要があります。
47都道府県の最低賃金と発効日一覧
金額は各地方最低賃金審議会の答申額です(単位:円、発効日はすべて2026年)。
| 都道府県 | 改定後 | 現行 | 引上げ額 | 発効日 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,131 | 1,075 | 56 | 10月1日 |
| 青森 | 1,090 | 1,029 | 61 | 10月29日 |
| 岩手 | 1,090 | 1,031 | 59 | 12月1日 |
| 宮城 | 1,098 | 1,038 | 60 | 10月1日 |
| 秋田 | 1,090 | 1,031 | 59 | 10月14日 |
| 山形 | 1,092 | 1,032 | 60 | 10月30日 |
| 福島 | 1,094 | 1,033 | 61 | 10月16日 |
| 茨城 | 1,136 | 1,074 | 62 | 10月18日 |
| 栃木 | 1,125 | 1,068 | 57 | 10月1日 |
| 群馬 | 1,120 | 1,063 | 57 | 10月3日 |
| 埼玉 | 1,196 | 1,141 | 55 | 10月1日 |
| 千葉 | 1,195 | 1,140 | 55 | 10月1日 |
| 東京 | 1,280 | 1,226 | 54 | 10月1日 |
| 神奈川 | 1,279 | 1,225 | 54 | 10月1日 |
| 新潟 | 1,108 | 1,050 | 58 | 10月1日 |
| 富山 | 1,119 | 1,062 | 57 | 10月1日 |
| 石川 | 1,113 | 1,054 | 59 | 10月3日 |
| 福井 | 1,112 | 1,053 | 59 | 10月4日 |
| 山梨 | 1,113 | 1,052 | 61 | 11月1日 |
| 長野 | 1,117 | 1,061 | 56 | 10月2日 |
| 岐阜 | 1,121 | 1,065 | 56 | 10月1日 |
| 静岡 | 1,154 | 1,097 | 57 | 10月15日 |
| 愛知 | 1,195 | 1,140 | 55 | 10月1日 |
| 三重 | 1,143 | 1,087 | 56 | 10月1日 |
| 滋賀 | 1,136 | 1,080 | 56 | 10月3日 |
| 京都 | 1,180 | 1,122 | 58 | 11月16日 |
| 大阪 | 1,231 | 1,177 | 54 | 10月1日 |
| 兵庫 | 1,172 | 1,116 | 56 | 10月1日 |
| 奈良 | 1,107 | 1,051 | 56 | 10月4日 |
| 和歌山 | 1,101 | 1,045 | 56 | 10月3日 |
| 鳥取 | 1,090 | 1,030 | 60 | 10月3日 |
| 島根 | 1,092 | 1,033 | 59 | 10月10日 |
| 岡山 | 1,104 | 1,047 | 57 | 10月2日 |
| 広島 | 1,141 | 1,085 | 56 | 10月11日 |
| 山口 | 1,101 | 1,043 | 58 | 10月8日 |
| 徳島 | 1,103 | 1,046 | 57 | 11月1日 |
| 香川 | 1,092 | 1,036 | 56 | 10月1日 |
| 愛媛 | 1,093 | 1,033 | 60 | 11月1日 |
| 高知 | 1,086 | 1,023 | 63 | 10月29日 |
| 福岡 | 1,114 | 1,057 | 57 | 10月4日 |
| 佐賀 | 1,095 | 1,030 | 65 | 11月15日 |
| 長崎 | 1,087 | 1,031 | 56 | 11月2日 |
| 熊本 | 1,092 | 1,034 | 58 | 12月1日 |
| 大分 | 1,096 | 1,035 | 61 | 11月1日 |
| 宮崎 | 1,085 | 1,023 | 62 | 10月24日 |
| 鹿児島 | 1,090 | 1,026 | 64 | 10月25日 |
| 沖縄 | 1,086 | 1,023 | 63 | 12月2日 |
知らないと違反になる3つの注意点
1. 手当の一部は最低賃金の計算に入らない
最低賃金と比べるのは「毎月支払われる基本的な賃金」だけです。次の賃金は計算から除きます。
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
- 残業代(時間外割増)、休日割増、深夜割増(22時〜5時の割増部分)
- 賞与など1か月を超える期間ごとに支払う賃金
- 結婚手当など臨時に支払う賃金
「時給1,250円+皆勤手当」で東京の店舗を運営している場合、基本の時給が1,280円を下回るので違反になります。手当込みで判断しないよう注意してください。
2. 月給の社員も時給に換算して確認する
月給制の店長候補や正社員も対象です。月給(対象となる賃金)を1か月平均所定労働時間で割って比べます。
例えば、基本給18万円・通勤手当1万円・皆勤手当1万円の社員で、月平均所定労働時間が160時間の場合、対象は基本給の18万円だけです。18万円÷160時間=1,125円となり、東京(1,280円)でも北海道(1,131円)でも最低賃金を下回ります。
3. 適用されるのは「店舗がある県」の金額
最低賃金は事業場ごとに、その所在地の都道府県の額が適用されます。本社が東京でも、宮崎の店舗の従業員には宮崎の1,085円が適用されます。派遣スタッフには、派遣先である店舗の所在地の最低賃金が適用されます。
全店舗の時給を一律で改定する場合は、最も早い発効日である10月1日までに対応する必要があります。県別に改定する場合は、発効日を店舗マスタで管理しておくと漏れを防げます。
違反した場合のペナルティ
最低賃金より低い賃金の合意は無効で、最低賃金額で契約したとみなされます。差額はさかのぼって支払う必要があり、地域別最低賃金に違反すると50万円以下の罰金の対象になります。
使える助成金:業務改善助成金は締切に注意
業務改善助成金は、事業場内で最も低い時給を50円以上引き上げ、あわせてPOSレジ、自動釣銭機、券売機などの設備投資を行う中小企業に、費用の一部を助成する制度です。
| 項目 | 2026年度の内容 |
|---|---|
| コース | 50円・70円・90円の3コース |
| 助成率 | 引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4 |
| 申請期間 | 2026年9月1日から、県の最低賃金の発効日の前日または11月30日の早いほうまで |
| 事業完了期限 | 原則2027年1月31日 |
| 主な要件 | 対象は雇用保険に入っていて雇入れ後6か月を過ぎた労働者。交付決定前の設備購入は不可 |
10月1日発効の15都道府県(北海道、宮城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、富山、岐阜、愛知、三重、大阪、兵庫、香川)は、申請期限が9月30日です。該当する店舗は至急確認してください。助成上限はコースと引上げ人数で異なり、最大は90円コースの600万円(特例事業者で10人以上を引き上げる場合)です。
非正規スタッフの基本給を3%以上引き上げる場合は、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)も検討できます。
シフト・人件費への影響と対策
扶養内パートの「年末の働き控え」が早まる
時給が上がると、同じ勤務時間でも年収が早く上限に近づきます。扶養の範囲内で働きたいパートスタッフは、年末に向けて勤務時間を減らしがちです。繁忙期の11〜12月に人手が足りなくなる典型的なパターンなので、10月の時点で各スタッフの年収見込みを確認しておきましょう。
なお、社会保険の「106万円の壁」(月額8.8万円の賃金要件)は2026年10月1日に撤廃されます。今後は「週20時間以上」かどうかが社会保険加入の基準になるため、シフトの組み方も見直しが必要です。
人件費を吸収する打ち手
- セルフレジ、モバイルオーダー、自動釣銭機などの省力化投資(業務改善助成金の対象になり得る)
- ピーク時間帯に合わせたシフトの最適化、応援勤務の仕組み化
- 価格改定の検討(原価・人件費の上昇分を根拠に説明できるようにする)
- 既存スタッフとの時給差(逆転・圧縮)への対応。新人と経験者の差がなくなると離職の原因になります
改定前の確認チェックリスト
- □ 全店舗の所在地と発効日を一覧にした
- □ 手当を除いた基本時給が新しい最低賃金以上か確認した
- □ 月給制の社員を時給換算して確認した
- □ 求人広告・求人サイトに掲載している時給を更新した
- □ 給与計算システムの時給マスタを発効日に合わせて変更した
- □ 業務改善助成金の申請期限と対象設備を確認した
- □ 扶養内スタッフの年収見込みと年末シフトを確認した
よくある質問
Q. 発効日の途中で給与の締め日をまたぐ場合は?
A. 発効日以降に働いた時間から新しい最低賃金が適用されます。締め日の途中でも、発効日を境に時給を切り替えて計算します。
Q. 研修期間中なら時給を下げてもよいですか?
A. 研修中でも最低賃金は適用されます。都道府県労働局長の許可を受けた減額特例(試用期間中など)を除き、最低賃金を下回ることはできません。
Q. 高校生アルバイトにも適用されますか?
A. 年齢に関係なく適用されます。
まとめ
2026年度の最低賃金は全国平均1,177円、東京・神奈川は1,280円前後に達しました。10月1日発効の地域では、給与システムの変更と業務改善助成金の申請が時間との勝負です。手当を除いた基本時給での確認、月給社員の時給換算、店舗所在地ごとの適用額の3点を押さえ、年末の人手不足に備えたシフト計画も早めに立てておきましょう。
出典
労働条件分科会資料(骨太の方針2026の記載)(厚生労働省)