コンビニオーナーは本部と対等な「事業者」であり、FC契約・独占禁止法・労働法という3つのルールを押さえておくことが、店と自分自身を守る近道です。本部との関係では公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインが、従業員との関係では労働基準法などが判断の物差しになります。

この記事は、これからコンビニ加盟を検討している方、すでに店舗を経営していて契約更新や時短営業を考えている方、従業員の採用・シフト管理に悩んでいる方に向けたものです。法律の専門家でなくても、どこに論点があり、誰に相談すればよいかが分かるように整理しました。

具体的には、公正取引委員会の実態調査の数字、フランチャイズ・ガイドラインの要点、中小小売商業振興法の法定開示書面、店舗従業員の労務ルール、酒・たばこ・医薬品の取り扱い、防犯とカスハラ対策、契約更新・中途解約の注意点を順に解説します。

1. コンビニオーナーの立場と本部との関係

オーナーは「労働者」ではなく「事業者」

FC契約を結んだオーナーは、本部に雇われた労働者ではなく、自らの判断で店を経営する独立した事業者です。中央労働委員会は2019年3月15日、セブン-イレブン・ジャパンの事件で、加盟者は会社との関係で労働組合法上の労働者に当たらないと判断しました。

事業者であるということは、労働時間の上限や最低賃金といった労働法の保護がオーナー本人には及ばない一方、本部との取引は独占禁止法などの競争ルールで守られるということです。本部との関係で困ったときは、労働基準監督署ではなく公正取引委員会や弁護士への相談が基本になります。

公取委の実態調査で分かったこと

公正取引委員会は2020年9月2日、大手コンビニチェーンの全加盟店57,524店を対象とした実態調査の結果を公表しました(回答12,093店、回答率21.0%)。主な結果は次のとおりです。

項目調査結果
人手不足を感じている店舗93.5%
深夜帯が赤字の店舗77.1%
「引き続き24時間営業を続けたい」と回答33.2%
時短営業の交渉に本部が応じていない8.7%
意に反して仕入れた商品が「ある」51.1%
追加出店時に本部から「何も提案されなかった」62.3%
予想売上・収益が加盟前の説明より悪かった41.1%
オーナーの1週間の平均店頭業務時間44.4時間

この調査結果を受けて、公正取引委員会はフランチャイズ・ガイドラインを改正しました。次の章で、その要点を見ていきます。

2. FC契約と独占禁止法:ガイドラインの要点

2021年4月改正のフランチャイズ・ガイドライン

公正取引委員会は2021年4月28日、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(2002年策定)を改正しました。本部の行為が「優越的地位の濫用」や「ぎまん的顧客誘引」に当たる場合の考え方が、コンビニの実態に合わせて具体化されています。

論点ガイドラインの考え方(要旨)オーナーが確認したいこと
24時間営業・時短営業時短営業の協議に本部が応じない行為を、優越的地位の濫用となり得る想定事例として示した時短を申し入れた日付と本部の回答を記録に残す
見切り販売本部が見切り販売を制限することは問題となり得る。柔軟に売価を変更できる仕組みの構築が望ましいとした値下げの手続きと、廃棄ロスの負担の仕組み
仕入数量の強制加盟者の意思に反する発注(無断発注など)を想定事例に追記した発注端末の操作履歴、推奨発注の扱い
ドミナント出店近隣出店時の「配慮」の内容を具体的に示すこと、口頭の取り決めを守らないことを問題となり得る例として示したテリトリー権の有無、配慮の内容が書面にあるか
加盟募集時の説明予想売上・モデル収益を示す場合は保証ではない旨の説明を求め、人手不足・人件費高騰など不利な情報の開示も望ましいとした収益モデルの前提条件(人件費・営業時間)

ガイドラインは法律そのものではありませんが、公正取引委員会が独占禁止法違反を判断する際の考え方を示したものです。本部との協議では「ガイドラインではこう書かれている」と具体的に示すと、話が進みやすくなります。

中小小売商業振興法の法定開示書面

中小小売商業振興法第11条により、本部は加盟希望者と契約を結ぶ前に、所定の事項を書面で交付して説明しなければなりません。施行規則で定められた主な記載事項は、加盟金・保証金などの額と返還条件、商品の販売条件、経営指導の内容、商標の使用条件、契約期間・更新・解除の条件、直近3事業年度の店舗数の推移、ロイヤルティの算定方法などです。

本部がこの義務に従わない場合、主務大臣は勧告でき、勧告に従わないときはその旨を公表できます(同法第12条)。加盟前に書面を受け取ったら、契約書と内容が一致しているかを必ず照合しましょう。

3. 店舗従業員の労務ルール

オーナー本人は事業者でも、オーナーが雇うアルバイト・パートは労働者です。コンビニは深夜営業・若年層・外国人留学生の雇用が多く、特に違反が起きやすいポイントを押さえておく必要があります。

テーマ主なルール
最低賃金2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円、東京都1,280円。発効日は都道府県ごとに異なる
深夜割増午後10時から午前5時までの労働は25%以上の割増賃金。時間外労働が深夜に及ぶ場合は50%以上
18歳未満(高校生など)午後10時から午前5時までの深夜労働は禁止。36協定を結んでいても原則として1日8時間・週40時間を超えて働かせられない
外国人留学生資格外活動許可(包括許可)の範囲内で、1週28時間以内(長期休業期間中は1日8時間以内)
時間外・休日労働36協定を締結し労働基準監督署長へ届け出る。上限は原則月45時間・年360時間
労災保険アルバイトや1日だけの短期雇用も対象。業務中・通勤中のけがに健康保険は使えない

深夜帯のシフトは、年齢と在留資格の確認が欠かせません。複数のアルバイトを掛け持ちする留学生は、他のアルバイトと合計して週28時間以内に収まっているかを本人に確認し、記録しておきましょう。詳しくは関連記事「外国人アルバイトの雇用ルール」「高校生アルバイトを雇う時のルール」「2026年度最低賃金」も参考にしてください。

4. 酒・たばこ・医薬品・収納代行の取り扱い

酒類

酒類を販売するには販売場ごとに酒類小売業免許が必要で、販売場ごとに酒類販売管理者を1人選任します。国税庁は、過去3年以内に酒類販売管理研修を受けた人から選任し、前回の受講から3年を超えない期間ごとに研修を受けさせるよう指導しています。売場には「20歳以上であることを確認できない場合は販売しない」旨を表示し、20歳未満と思われる客には年齢確認を行います。

たばこ・医薬品

たばこの販売にはたばこ小売販売業の許可が必要で、20歳未満の客への販売は禁止されています。年齢確認ボタンを押してもらうだけでなく、明らかに若く見える客には身分証の提示を求める運用が安全です。

一般用医薬品を販売する場合は、都道府県知事等による店舗販売業の許可を受け、薬剤師または登録販売者を配置する必要があります。登録販売者が不在の時間帯は医薬品を販売できないため、シフトと売場の閉鎖方法を決めておきましょう。

収納代行・各種サービス

公共料金や通販代金の収納代行で受け取ったお金は、店の売上ではなく本部やその先の事業者に引き渡すお金です。レジ締め時の現金過不足は、従業員の不正だけでなく収納代行の処理ミスでも起きるため、取り扱い手順を契約や本部マニュアルで確認しておきましょう。

5. 防犯・カスハラ対策と契約更新・中途解約

防犯(強盗・万引き)

深夜の少人数営業は強盗のリスクが高まります。レジ内の現金を少なく保つ、防犯カメラの位置と録画期間を確認する、緊急時は抵抗せず通報を優先するといった基本を、全従業員に共有しておくことが大切です。万引きは発見時の声かけ方法と警察への連絡手順を決めておくと、従業員の負担が減ります。季節ごとの対策は関連記事「年末年始の店舗の防犯対策」で解説しています。

カスハラ対策の義務化

2026年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメント対策として、方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速な対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止などの措置が求められています。コンビニのオーナーも従業員を雇う事業主として対象になるため、本部のマニュアルを確認し、自店の方針と相談窓口を決めておきましょう(関連記事「カスハラ対策義務化」)。

契約更新・中途解約

FC契約には期間があり、満了時に更新されるかどうかは契約書の条件次第です。中途解約では違約金や、店舗設備・在庫の精算が発生することが多いため、解約条項と違約金の計算方法を早めに確認しておきましょう。更新や解約の判断を迫られたときは、法定開示書面と契約書を手元にそろえ、弁護士や中小企業向けの相談窓口に相談するのが確実です。

オーナー向けチェックリスト

  • □ 法定開示書面と契約書の内容(契約期間・更新・解除・違約金)を照合した
  • □ テリトリー権の有無と近隣出店時の「配慮」の内容を書面で確認した
  • □ 時短営業や見切り販売について、本部とのやり取りを日付つきで記録している
  • □ 全従業員の時給が2026年度の地域別最低賃金以上になっている
  • □ 18歳未満の従業員を午後10時から午前5時に勤務させていない
  • □ 留学生の在留カードと資格外活動許可、週28時間以内を確認している
  • □ 36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ている
  • □ 酒類販売管理者が過去3年以内に研修を受講している
  • □ カスハラ対応方針と相談窓口を決め、従業員に周知した

よくある質問

Q. 本部に24時間営業をやめたいと伝えても、協議に応じてもらえません。

A. フランチャイズ・ガイドラインでは、時短営業の協議に本部が応じない行為を優越的地位の濫用となり得る例として挙げています。申し入れの日付・内容・回答を記録し、改善しなければ公正取引委員会への相談を検討してください。

Q. オーナー自身が長時間働いても労働基準法違反にはならないのですか。

A. オーナーは事業者のため、労働基準法の労働時間規制は本人には適用されません。ただし、健康を損なえば経営そのものが続かなくなるため、人員配置や営業時間の見直しを本部と協議することが重要です。

Q. 高校生に夜10時以降のシフトを頼んでもよいですか。

A. 満18歳未満の従業員は、午後10時から午前5時まで働かせることができません。18歳の誕生日を迎えているかを、年齢確認書類で確認してからシフトを組みましょう。

Q. 本部から勝手に発注された商品の代金も負担しなければなりませんか。

A. ガイドラインでは、加盟者の意思に反する発注を優越的地位の濫用となり得る例としています。発注履歴を保存したうえで本部に説明を求め、解決しなければ弁護士などの専門家に相談してください。

まとめ

コンビニオーナーは独立した事業者であり、本部との取引は独占禁止法と中小小売商業振興法、従業員との関係は労働基準法などのルールで整理できます。公正取引委員会のガイドラインは、時短営業の協議拒否、意に反する発注、近隣出店の説明不足などを問題となり得る行為として示しています。

従業員の労務では、最低賃金、深夜割増、18歳未満の深夜業禁止、留学生の週28時間が特に重要です。酒・たばこ・医薬品の販売ルール、防犯、2026年10月から義務化されたカスハラ対策も含め、チェックリストで定期的に点検しましょう。

出典