子ども・子育て支援金は、2026年(令和8年)4月分の保険料から徴収が始まり、会社員などの被用者保険では5月支給の給与から天引きされています。2026年度の支援金率は0.23%で、原則として労使で半分ずつ負担します。

影響を受けるのは、健康保険に加入する従業員を雇うすべての事業者です。正社員に加え、社会保険に加入するパート・アルバイトが多いスーパー、コンビニ、ドラッグストア、飲食店では、事業主負担の増加が人件費に直接表れます。

この記事では、こども家庭庁と協会けんぽの公表資料をもとに、支援金の仕組み、給与計算での扱い、2027年度・2028年度の見通し、パート・アルバイトの扱い、給与明細の表示方法、店舗の人件費試算を解説します。

子ども・子育て支援金とは

医療保険料とあわせて集める新しい拠出金

子ども・子育て支援金は、こども・子育て政策の財源として、医療保険の加入者全体で負担する仕組みです。こども家庭庁によると、支援金は児童手当の拡充、妊婦のための支援給付、こども誰でも通園制度、出生後休業支援給付などに充てられます。

集め方は、健康保険料などの医療保険料とあわせて徴収する形です。税金ではなく、医療保険者が保険料と一緒に集めます。

徴収開始の時期

区分開始時期
協会けんぽの一般被保険者(会社員など)令和8年4月分(5月納付分)から。5月支給の給与から天引き
協会けんぽの任意継続被保険者・日雇特例被保険者令和8年4月分(4月納付分)から
国民健康保険・後期高齢者医療制度令和8年度分の保険料とあわせて、6~7月ごろの納入通知書で通知

翌月徴収の会社では、4月分の支援金を5月支給の給与から控除します。当月徴収の会社は給与ソフトの設定に合わせて開始月を確認してください。

給与計算での支援金の計算方法

標準報酬月額と標準賞与額に支援金率を掛ける

こども家庭庁の事業主向けリーフレットでは、支援金額(月額)は「標準報酬月額×支援金率」、賞与分は「標準賞与額×支援金率」で計算するとしています。2026年度の支援金率は0.23%で、協会けんぽと健康保険組合などの被用者保険で共通です。

事業主は基本的に支援金額の半分を負担します。つまり、従業員の天引き額は標準報酬月額の0.115%、事業主負担も同じく0.115%が目安です。

標準報酬月額支援金の総額(0.23%)従業員負担(月額)事業主負担(月額)
9万8,000円225.4円112.7円112.7円
20万円460円230円230円
30万円690円345円345円
40万円920円460円460円

実際の天引き額は、端数処理のルールや給与ソフトの設定によって1円程度ずれることがあります。

年収別の本人負担の目安

こども家庭庁の試算(令和8年度)では、被用者保険の本人負担の月額は次のとおりです。年収(毎月の給料と賞与の合計)に0.23%を掛けて12で割り、その半分を本人分としています。

年収本人負担(月額)
200万円192円
400万円384円
600万円575円
800万円767円
1,000万円959円

事業主も同じ額を負担します。

賞与と育児休業中の扱い

支援金は賞与からも徴収されます。健康保険料・厚生年金保険料と同じ考え方です。

産前産後休業・育児休業中は、医療保険料や年金保険料と同様に、支援金も免除されます。休業者の給与計算で健康保険料を免除している場合は、支援金も免除になっているかを確認してください。

2027年度・2028年度の見通し

支援金の総額は段階的に増える

こども家庭庁の資料では、支援金の総額は令和8年度に概ね6,000億円、令和9年度に概ね8,000億円、令和10年度に概ね1兆円と段階的に増える予定です。総額が増えるため、支援金率も上がる見込みです。

令和10年度の負担の見込み

こども家庭庁の試算では、令和10年度の被用者保険の本人負担(月額、50円単位で丸め)は、年収200万円で350円、400万円で650円、600万円で1,000円、800万円で1,350円、1,000万円で1,650円とされています。令和8年度の年収400万円の384円と比べると、1.7倍程度になる計算です。

ただし、この試算は一定の仮定を置いたもので、賃上げで総報酬が伸びれば金額は下がると説明されています。各年度の支援金率は国が年度ごとに示すため、2027年度の率は正式な公表を待つ必要があります。

パート・アルバイトの扱いと給与明細の表示

社会保険に加入しているかどうかで決まる

支援金は医療保険料とあわせて徴収されるため、勤務先の健康保険に加入しているパート・アルバイトは、正社員と同じく標準報酬月額に応じて天引きの対象になります。事業主負担も同様に生じます。

勤務先の健康保険に加入していない人は、自身が加入する国民健康保険などを通じて負担するか、家族の被扶養者として個別の負担が生じないかのいずれかになります。この場合、会社の給与計算で支援金を控除する必要はありません。

社会保険の適用拡大が進むと、支援金の対象となるパートも増えます。加入要件の変化は、関連記事「106万円の壁撤廃」で詳しく解説しています。

給与明細への表示

こども家庭庁は事業主向けリーフレットで、給与明細に支援金の内訳を記載する取組について理解と協力を求めています。義務ではありませんが、健康保険料と区別して「子ども・子育て支援金」の欄を設けると、従業員からの問い合わせを減らせます。

店舗で「手取りが減った」と質問を受けたときに説明できるよう、制度の概要と金額の目安を店長向けにまとめておくと安心です。

店舗の人件費試算と実務チェックリスト

中規模スーパー1店舗の試算(仮定の数値)

社会保険に加入する従業員が、正社員10人(標準報酬月額30万円、年間賞与60万円)、パート20人(標準報酬月額9万8,000円)の店舗を想定します。2026年度の事業主負担は次のとおりです。

区分計算式年間の事業主負担
正社員の月額分345円×10人×12か月4万1,400円
パートの月額分112.7円×20人×12か月2万7,048円
正社員の賞与分60万円×0.115%×10人6,900円
合計-7万5,348円

1店舗あたり年約7.5万円です。10店舗を運営する企業なら年約75万円になります。令和10年度に向けて率が上がれば、負担はさらに増える見込みです。

コンビニ・飲食店の試算(仮定の数値)

社会保険に加入する従業員が、標準報酬月額20万円の5人だけという小規模な店舗では、事業主負担は230円×5人×12か月=年1万3,800円です。本人負担も同額で、1人当たり月230円が給与から控除されます。

金額自体は大きくありませんが、社会保険に加入するパートが増えると、健康保険料・厚生年金保険料の事業主負担とあわせて人件費が増えます。支援金だけでなく、社会保険料全体で試算することが大切です。

標準報酬月額の見直しとの関係

支援金は標準報酬月額に連動するため、昇給や定時決定などで標準報酬月額が変わると、支援金の額も変わります。標準報酬月額を更新した月には、健康保険料と支援金の両方が正しく変わっているかを確認しましょう。

最低賃金の引上げで標準報酬月額が上がると、支援金も連動して増えます。関連記事「2026年度最低賃金」とあわせて、翌年度の人件費予算に織り込んでおきましょう。

実務チェックリスト

  • □ 給与ソフトに支援金率0.23%が設定され、5月支給分(4月分)から控除されているか確認した
  • □ 賞与からの控除が設定されているか確認した
  • □ 産休・育休中の従業員の支援金が免除になっているか確認した
  • □ 給与明細に「子ども・子育て支援金」の欄を設けるか検討した
  • □ 社会保険に加入するパート・アルバイトの人数と標準報酬月額を把握した
  • □ 事業主負担の年間額を店舗別に試算し、予算に反映した
  • □ 従業員からの質問に答えるための説明資料を店長に配布した
  • □ 2027年度の支援金率が公表されたら、設定を更新する担当者を決めた

よくある質問

Q. 支援金のために新たな届出は必要ですか。

A. 支援金は医療保険料とあわせて徴収されるため、協会けんぽなどから届く保険料の納入告知に含まれます。具体的な手続きの有無は、加入している医療保険者の案内で確認してください。

Q. 子育てをしていない従業員も負担するのですか。

A. はい。支援金は医療保険の加入者全体で負担する仕組みで、子育て世帯かどうかに関わらず対象になります。こども家庭庁のQ&Aでも、子育て世帯を含め全体で支える考え方が説明されています。

Q. 社会保険に加入していないアルバイトの給与から控除する必要はありますか。

A. 必要ありません。勤務先の健康保険に加入していない人は、会社の給与計算での控除対象になりません。

Q. 支援金の事業主負担は、賃上げ促進税制の給与等支給額に含まれますか。

A. 中小企業庁の賃上げ促進税制Q&Aでは、社会保険料の事業主負担などの法定福利費は給与等支給額に含まれないとしています。支援金の事業主負担も同様に扱われると考えられますが、個別の判断は税理士に確認してください。

Q. 支援金について従業員から問い合わせがあった場合、どこを案内すればよいですか。

A. こども家庭庁の子ども・子育て支援金制度コールセンター(0120-303-272)が案内されています。受付時間は公表資料で確認してください。

まとめ

子ども・子育て支援金は2026年4月分から徴収が始まり、2026年度の支援金率は0.23%を労使で折半します。標準報酬月額30万円の従業員なら、本人・事業主それぞれ月345円が目安です。

支援金の総額は令和10年度に向けて増える予定で、率の引上げが見込まれます。社会保険に加入するパートが多い小売・外食では、給与ソフトの設定と明細表示を整えたうえで、毎年度の率の公表に合わせて人件費を見直しましょう。

出典